JOURNALガリレオ通信ワンちゃんのワクチン接種について

当院では、犬の混合ワクチン追加接種による副作用のリスクや体への大きな負担をなるべく減らしたいと考え、ワクチンの追加接種が必要かどうかを調べることができる『犬用ワクチチェック』を導入しました。

犬の混合ワクチンはご存知のとおり、1本の注射でたくさんの感染症が予防できます。予防できる感染症の数により、2種混合ワクチンから多くて10種混合ワクチンまであります。

2015年に世界小動物獣医学会(WSAVA)から発表されたワクチンの最新ガイドラインでは、
①集団免疫の概念に基づき、すべての動物にワクチン接種を奨励すべきである。
②個体に対するワクチン負荷を軽減するため、接種の回数を可能な限り少なくすべきである。
としています。そのうえでワクチンを以下の表のように分類し、過剰接種を抑制することを提唱しています。

◾️コアワクチン / 致死性が高いため、接種すべきもの
・犬パルボウイルス
・ジステンパーウイルス
・犬アデノウイルス

◾️ノンコアワクチン / 環境によって感染するリスクがある場合に接種すべきもの
・パラインフルエンザ
・レプトスピラ
・ボルデテラ

◾️非推奨ワクチン / 接種に科学的根拠がないもの
・コロナウイルス

世界小動物獣医学会では、成犬で十分な抗体(※1)があれば、コアワクチンの追加摂取は必要ない、としています。

今までは、この抗体を調べるのに外部の検査会社に依頼し、高額な費用がかかりました。
そのような事情もあり、日本では慣習的に1年に1回接種していたのです。
ところが、犬用ワクチチェックの登場により、院内でも簡単にコアワクチンの抗体(※1)を調べることができるようになりました。

犬用ワクチチェック

今後は、このワクチチェックの結果を見て、ワクチンの追加接種をするかどうかを決めることができます。
つまり、何年に1回という考えではなく、抗体がなければ接種する(※2)、抗体があれば接種しなくてもよい、という考え方になります。

検査する時期や摂取するワクチンの種類、費用などについては、診察の際に直接ご質問ください。

最後に・・・今回は「ワクチチェック」の登場で抗体を確認すればワクチンの無駄な追加接種の必要はないよ、というお話しでした。
ただし、この抗体の話しは「子犬期に正しくコアワクチンを接種していること」を前提にしています。
そして、ワクチンは怖いと思ってしまい何となく打たなくてもいいか・・・となってしまうことが一番怖いのです。多くのワンちゃんがワクチンを接種し抗体を持つことで、「集団免疫」つまりその病原体が蔓延するのを防げるのです。日本における狂犬病がそのよい例です。人間で言えば天然痘や結核、はしかなどに当たります。ワクチンを無駄に怖がらず、あくまでも感染症からワンちゃんを守るために、まずはご相談ください。

※1 抗体とは、特定の病原体に結合し体から追い出してくれる物質。
※2 抗体がないと分かっても、過去に重篤な副作用がでた場合、あるいは現在病気の治療中などの場合にはワクチンの追加接種を勧めないことがあります。

https://slj033.wixsite.com/vaccicheck-owner

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この記事を書いたのは
獣医師
勝村 桃子MOMOKO KATSUMURA
東京大学卒・神奈川県横浜市出身
BACKGROUND

大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務。 その後、日本動物高度医療センター画像診断科にて11年勤務。超音波検査を専門とする。 2018年 ガリレオ動物病院勤務。

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