ワンちゃん(柴犬)のお腹の超音波検査を行いました。
1ヶ月前から下痢や嘔吐が続き、対症療法で改善がないとのことでした。
1ヶ月の間に痩せてきて、食欲も無くなっていました。

お腹の中を超音波でみてみると、小さな異常はいくつかあるものの、最もひどかったのは小腸です。
ほぼ全ての小腸の粘膜(食べ物が接する内側の部分)がボロボロの状態です。
腸の動きも悪く、これでは食べることもできないし、下痢や嘔吐をするのは分かるなぁという感じです。

超音波装置

さて、診断は・・・
経験上、このような小腸で柴犬ということであれば、「リンパ腫」という腫瘍が一番疑わしいのですが、画像検査だけで診断はできません。

では診断をするために、次に何をすべきか・・・
方法は2つ。
①内視鏡検査で腸の細胞を取ってきて、病理検査を行う。
②お腹を開けて、腸の一部を切り取って、病理検査を行う。
つまり、異常が認められる小腸の細胞を検査しないと確定診断はできないということです。
ただし、①②どちらも全身麻酔をかけなくてはなりません。
1ヶ月の闘病生活で体重、体力ともに落ちた状態では、麻酔のリスクも高く、とても心配です。

そこで、今回は最もリスクの低い方法で診断しました。

それは・・・お腹の中には小腸に関係しているリンパ節がいくつもあります。
そのリンパ節が厚さ7-10mm程度で正常よりも少し腫れていました。
そこで、このリンパ節に向けてお腹の外から細い針を入れ、細胞を取ってくるのです。
本当は小腸から細胞を取るべきなのですが、小腸の壁は厚くなく、内腔に液体が貯まり拡張していたので、針を入れても細胞が取れる確率は低いと判断しました。
リンパ節からはしっかりと細胞が取れました。
もちろん、麻酔や鎮静の薬も使わなかったので、すぐに処置は終了。

リンパ節の細胞はすぐに病理検査に出し、翌日、予想通り「リンパ腫」と診断が出ました。
ワンちゃんはすぐにリンパ腫の治療を始めました。

このように、超音波装置は「みる」だけでなく、細胞を取るために使ったり、さらには少量の液体を取るために使ったり・・・とても優秀な機器で、早期発見→診断には欠かせません。

なんと言っても、動物にとって負担が非常に少ないのが一番良いところですね。
痛くもないし、薬も使わないし・・・暗い中で観察するので、検査中に眠ってしまう子もいます。

また当院ではお腹の中だけでなく、超音波で心臓もしっかりみることができます。
気になるところがあれば、ぜひご相談ください。

SHARE
LINEXFacebook
この記事を書いたのは
獣医師
勝村 桃子MOMOKO KATSUMURA
東京大学卒・神奈川県横浜市出身
BACKGROUND

大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務。 その後、日本動物高度医療センター画像診断科にて11年勤務。超音波検査を専門とする。 2018年 ガリレオ動物病院勤務。

関連記事