JOURNALガリレオ通信脂肪腫(しぼうしゅ)

ワンちゃんの体を撫でていたら、プヨプヨした膨らみが見つかったことはありませんか?

「先生、これ何ですか?」と病院で聞いたら、”脂肪の塊り”だよ、と言われ何となく安心したことはありませんか?
小指の爪ほどの小さいものから拳大の大きなものもありますね。

実は”脂肪の塊り”と言っても、ただの”脂肪”ではなくて、「脂肪腫」という良性の腫瘍です。
中高齢以上のワンちゃんの体表にできることが多い腫瘍のひとつなのです。

脂肪腫という名前のせいか、「皮下脂肪が多いのね」とか「皮下脂肪がそこに固まったのね」というイメージを持たれてしまいます。
そのため、人間の脂肪吸引みたいに吸い取っちゃえばいいのですか?と聞かれることもありますが・・・
残念ながら、吸い取ることはできません。

脂肪腫はただの皮下脂肪ではなく、腫瘍=デキモノなので、程度の差はありますが、徐々に大きくなります。
稀に1kgを超える大きさになった脂肪腫を診ることもあります。

良性なので基本的には経過観察をしていることが多いかと思いますが、実は脂肪腫はできた部位によっては注意が必要になります。

摘出した脂肪腫

脇(わき)や股(また)、関節や骨の隙間にできた場合、大きくなると骨や神経を圧迫し痛みを引き起こします。
また、前肢や後肢にできた場合には、血管やリンパ管を圧迫することで、浮腫み(むくみ)が出てしまうこともあります。
さらに、痛みや浮腫みが出なくても、座ったり歩いたりする時に擦れる部位にできると、表面の出血を繰り返すこともあります。

このような場合には、良性であっても手術で摘出することを考えなくてはなりません。

多くの脂肪腫は、おまんじゅうのようにコロっとしたひと塊りのしこりです。
しかし中には境界がはっきりしない浸潤型のタイプもあります。
さらに、ごく稀ですが「脂肪肉腫」という悪性のものがあります。

手術を検討しないといけないものや、病理検査をしないと確実に診断できないものもあるので、脂肪の塊りと言われても、大きくなってきたり、できた部位が気になる時には、迷わず病院に相談しましょう。

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この記事を書いたのは
院長・獣医循環器認定医
鈴木 啓介KEISUKE SUZUKI
麻布大学卒・静岡県浜松市出身
BACKGROUND

幼少期から常にたくさんの犬に囲まれて過ごしていたことで、自然と獣医師を目指す。 大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務し、その後日本動物高度医療センターで10年間勤務。同センターでは循環器・呼吸器科の医長を務める。 2018年ガリレオ動物病院を開業。

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