JOURNALガリレオ通信下痢〜細菌性腸炎〜

下痢、軟便、血便・・・“便の異常”は動物病院にかかる症状“トップ3”に入りますね。

下痢はしているけど、とても元気でご飯もいつも通り食べる。
あるいは、下痢の後に吐いて、食べないし元気がない。
など、下痢をしていても、その子の状態は様々です。

なぜなら、下痢になる理由はたくさんあり、さらに年齢やどのくらいの期間下痢をしていたか、などで状況も変わるからです。

今回は、最もよく遭遇する「細菌性腸炎」のお話しです。

便の顕微鏡写真

細菌性腸炎・・・つまり“悪い菌”が原因で、腸に炎症が起こっている、ということ。
では、“悪い菌”とは何か。
よく見つかるのは“カンピロバクター”という螺旋状の形をした細菌と、“クロストリジウム”という毒素を産生する芽胞形成性の細菌の2種類です。

実はこの2つの細菌は、健康で下痢をしていない犬猫の便からも検出されることがあります。
つまり、便の中に見つかったからと言って「悪い!」「下痢の原因だ!」とは言えません。
しかし、これらの菌が異常に増加しているということは、腸内の細菌叢は乱れているということ。
腸内には善玉菌、悪玉菌、日和菌がいて一定のバランスを保っているのであれば、何も問題は起こりません。
しかし、何かをきっかけにこのバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になると下痢や血便が出て腹痛などが起こるのです。

生の鶏肉

<カンピロバクター>
急性の粘液便や血便、嘔吐や腹痛などの消化器症状が現れます。
カンピロバクターに汚染された食品や水、感染した動物の排泄物等に接触することで感染します。
感染しても症状が出ない(不顕性感染)ことが多いのですが、ストレスの多い環境下や免疫力が低下している時に発症することがあります。
そのため、抵抗力の低い子犬や子猫の下痢を検査すると、異常に増加し活発化したカンピロバクターをよく確認します。
また、人間では食中毒を起こす代表的な細菌ですが、特に生肉には注意が必要です。

<クロストリジウム>
血便や粘液便が急に始まります。
この菌は毒素を産生するため、吐き気を伴うことがあります。
そのため、薬を飲めないことも多く注射や点滴をする場合があります。

いずれの場合も、菌に対しては抗菌薬です。
それぞれに効果のある抗菌薬を投与し、状況に応じて点滴などの治療を加えれば、一般的にはすぐに改善します。

治療反応が乏しい場合や再発を繰り返す場合は、その背景に別の病気が潜んでいると考えます。
若い子の場合は、糞便検査でなかなか検出できない原虫がいたり、食物アレルギーが関与していることが多く見られます。
高齢の子の場合は、慢性腸症や腸のリンパ腫など、何か基礎疾患があるかもしれません。

そのため再発を繰り返す場合は、糞便検査だけでなく腹部の超音波検査や便のPCR検査など、次に進んだ検査を実施する必要があるため、注意が必要です。

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この記事を書いたのは
獣医師
勝村 桃子MOMOKO KATSUMURA
東京大学卒・神奈川県横浜市出身
BACKGROUND

大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務。 その後、日本動物高度医療センター画像診断科にて11年勤務。超音波検査を専門とする。 2018年 ガリレオ動物病院勤務。

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