JOURNALガリレオ通信心臓の雑音って何のこと?

身体チェックで聴診をしたら(聴診器で心臓の音を聴くこと)、心雑音が聴き取れました。
病院でこのような指摘を受けたことがある子は10歳を過ぎると多いのではないでしょうか。
特に、チワワ・マルチーズ・シーズー・キャバリアなどの犬種に多いかもしれません。
幼少期に指摘されていなければ、後天的な心疾患の疑いがあると考えられます。

最初のうちは食欲元気もあり、特に心配するような症状はないでしょう。
しかし、”心雑音”がするということは、心臓に何かしらの問題があるということ。
雑音の特定と病態の判定のためにいくつかの検査が必要です。

心臓の超音波検査

心臓の検査で必須なのは・・・
①心臓の超音波検査(エコー検査)
②胸部のレントゲン検査

必要に応じて実施する検査は・・・
①心電図検査
②血圧測定
③血液検査

心臓の解剖図

中高齢のわんちゃんの心雑音の原因で最も多いのは、僧帽弁の変性による閉鎖不全による血液の逆流です。
どういう状態かというと、心臓の左側の部屋(左心房と左心室)を隔てる2枚の弁(僧帽弁)がきちんと閉じることができなくなり、逆流が生じている・・・ということです。
この逆流の音が心雑音です。

体中を流れる血液は一定方向を守らなくてはなりません。

①全身を巡った血液→②心臓(右心房)→③心臓(右心室)→④肺→⑤心臓(左心房)→⑥心臓(左心室)→⑦全身
これが決まった流れの方向になります。
肺で血液は酸素を取り込み、それを心臓の左心室から全身に回していくのです。

高齢の小型犬に多い心臓の病気は
⑤→⑥に問題が起こる「僧帽弁閉鎖不全症」
②→③に問題が起こる「三尖弁閉鎖不全症」
があります。

いずれの場合も、異常部位で血液の逆流が起こります。

眠るわんちゃん

初期の段階では、症状はなく、全身にそれほど影響はありません。

しかしながら進行すると・・・
カーッと痰を吐くかのような咳をすることが増えてきます。

さらに進行すると・・・
疲れやすく、お散歩も長く歩けなくなったり、なんとなく痩せてきたりします。
そして、肺に血液が鬱滞し水が漏れ出て“肺水腫”になると、とても苦しくなります。
酸素が十分取り込めなくなり、一気に元気がなくなります。

聴診器

治療を始めるタイミングは
心臓に雑音が聴診され、心臓の一部が大きくなっているのが確認された時が投薬開始の目安になります。
この段階で症状がない子も多いため、治療が必要なの?という疑問もあるかもしれません。
しかし、血液の逆流の原因となる”変性した弁”は、元に戻ることはなく、少しずつ悪くなっていきます。
心臓の治療は、その進行をなるべく遅くし症状が出ないように、もしくは症状を和らげるために行う治療になります。
また、手術という方法もありますが、特殊な設備と高度な技術や経験が必要になります。

まずは、“心臓に雑音がある”と言われたら、きちんと心臓の評価をしてもらうことから始めましょう。

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この記事を書いたのは
院長・獣医循環器認定医
鈴木 啓介KEISUKE SUZUKI
麻布大学卒・静岡県浜松市出身
BACKGROUND

幼少期から常にたくさんの犬に囲まれて過ごしていたことで、自然と獣医師を目指す。 大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務し、その後日本動物高度医療センターで10年間勤務。同センターでは循環器・呼吸器科の医長を務める。 2018年ガリレオ動物病院を開業。

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