“心臓が悪い”って、どういうことでしょう。
心臓の病気は、先天的に(生まれつき)悪い場合と、後天的に(年を重ねてきて)悪くなる場合に分かれます。
今回は、先天的心疾患・・・つまり、生まれつき心臓や心臓につながる血管に何かしらの異常がある場合のお話しをします。
先天的心疾患にはいくつも種類があります。
心臓に異常があるということは、血液の全身循環がうまくいかなくなるということです。
すぐに問題になりそうなものですが、異常の箇所やその程度によって症状が異なり、生まれてすぐに症状が現れる場合もあれば、全く症状がなく気付かれずに成長していく場合もあります。
代表的な疾患名を挙げてみます。
・動脈管開存症(PDA)
・心室中隔欠損症(VSD)
・大動脈狭窄症(AS)
・肺動脈狭窄症(PS)
・ファロー四徴症(TOF)
もちろんこれらは人間にも発症する心臓の病気です。
原因は特定できませんが、遺伝的要因はあると言われています。
多くの場合、子犬子猫の最初のワクチン接種の時に動物病院で異常を指摘されます。
なぜなら、聴診器で心臓の音を聴くと普通“ドクドク”と聞こえる心臓の音が、“ザーッザーッ”とか“ゾワッゾワッ”とか、“シュワンシュワン”などの異常音に聴こえるからです。
ただし心臓の音に異常があると分かっても、どの部分にどれだけの異常があるか、正確なことは言えません。
そこで、必要なのが・・・
☑︎レントゲン検査
☑︎心臓超音波検査(エコー)
☑︎心電図検査
上記の検査は必須です。
検査をすれば原因は○○○ですと、ほぼ診断ができます。
そして、先天性心疾患が判明し、どこにどの程度の異常があるかが分かれば、何をしてあげられるかの相談ができます。
例えば・・・
・今すぐ治療する必要はありません。この程度の異常であれば、成長とともに問題なくなっていくことが多いので、定期的に経過観察をしていきましょう。
・今からお薬による内科的治療が必要です。
・手術をすれば完全に治ります。
・さらに特殊な検査で詳しく検査する必要があります。
といったお話しができるのです。
ここで大切なのは、「手術をすれば治る心疾患がある」ということ。
ただし悲しいことに、子犬子猫の時に異常に気付かれなかったり、異常があると分かっていてもきちんと検査を受けないまま成長した場合、症状が出始めて状態が悪くなってから検査をしても、手術はもうできない・・・ということになる場合があります。
この“治せた”はずなのに・・・短い命で終わってしまう、しかもとても苦しい思いをさせて・・・という子に出会うと、本当に辛いし悔しい思いをします。
どうすればよいか。
早く異常を見つけてあげること。
そして、異常を発見したら専門の検査をすぐに受けること。
これしかありません。
残念ながら、先天性心疾患を予防することはできません。
早く見つけてあげるしかないのです。
子犬なのに、子猫なのに、なんだか大人しいなぁとか、遊んでもすぐに疲れてしまう(運動不耐性と言います)、成長が遅いまたはなかなか太れない、食べているけど痩せている・・・などが見られる場合は、ちょっと気にしてあげた方がよいかもしれません。
心臓に限ったことではありませんが、生まれつきの異常が隠れているかもしれないからです。
まずは、かかりつけの先生にきちんと相談してみましょう。
この子の心臓は大丈夫ですか?と。
幼少期から常にたくさんの犬に囲まれて過ごしていたことで、自然と獣医師を目指す。 大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務し、その後日本動物高度医療センターで10年間勤務。同センターでは循環器・呼吸器科の医長を務める。 2018年ガリレオ動物病院を開業。