JOURNALガリレオ通信その吐き気・・・膵炎(すい炎)かも?

膵臓は胃から十二指腸の裏側にある非常に薄くて細長い臓器。
主な働きは2つあります。
1つは消化酵素を作り、消化管に分泌するという働きです。
もう1つは、血糖値に関わる重要なホルモンを作り、血液中に分泌します。

とても大切な臓器です。
“膵炎”とは、その消化酵素が何らかの理由で膵臓そのものを消化させてしまい炎症を引き起こす病気のことを言います。

膵炎には「急性膵炎」と「慢性膵炎」があり、問題になるのは「急性膵炎」。
人での2大原因はアルコールと胆石と言われており、重症度にもよりますが全身に影響が及ぶため、入院による集中治療が必要な場合が多い疾患です。

実は、犬の膵炎も非常によく診る病気です。
原因が特定できないことも多くありますが、明らかに脂肪分の多い食べ物を盗み食いしたのが原因だったり、さらに胆石や胆嚢炎、高脂血症やホルモンの病気などが原因と考えられる場合もあります。

祈りのポーズ/腹痛

症状ですが・・・
まずほとんどの場合、“腹痛”があります。特に痛みは上腹部といって胃のあたりから始まります。
しかし、犬はなかなか痛みを見せない動物。
実際、とても痛いのに、ご家族には気付かれていないことは多くあります。

☑︎抱っこしても体を硬直させている。
☑︎触るのを嫌がる。
☑︎祈りのポーズ(伏せの姿勢で上半身は伸ばし、後ろ足は立たせお尻を突き出したポーズ)をする 。
☑︎体を丸めて震えている。

このような様子が見られたら、お腹が痛いのかも?と疑ってよいかもしれません。

さらに、気持ち悪さが出てきます。
食べた物や液体を吐きもどすこともありますが、気持ち悪い時の犬は口をペチャペチャしたり、ヨダレが出たりします。
下痢や発熱が見られることもあります。

点滴

このような症状が出たら、膵炎を鑑別診断のひとつに入れないといけません。
診断は、血液検査と超音波画像検査で分かります。
そして実際の臨床症状よりも、お腹の中にはっきりと悪さが出ていることが多くあります。

例えば・・・
☑︎膵臓が腫れている。
☑︎膵臓の周囲に腹膜炎が広がっている。
☑︎上腹部に少量の腹水が確認される。
☑︎胃が全く動いていない。
☑︎十二指腸に強い炎症のサインが認められる。

いろいろとありますが、主にこのような異常が超音波検査で確認されます。
また、血液検査の異常値は臨床症状より遅れて出ることもあります。

急性膵炎に対しては、早期にしっかりと治療を始めることがとても重要です。
なぜなら、重症化すると全身に影響が及びやすく、ショック状態に陥り命に関わることもあるからです。
急性膵炎の治療は入院による内科治療が中心になります。
点滴や注射で腹痛を和らげ、吐き気を抑え、膵臓を休ませてあげます。

お腹を痛がっているなぁ、いつもの吐き方と違うなぁと感じたり、一度病院で対症療法を受けても良くならない場合などは、膵炎の可能性を疑ってみてもよいかと思います。

膵炎は意外と身近な病気です。
よく、シュナウザーやプードル、シニア期以上、メスでの発症が多いなどと言われますが、実際にはいろいろな犬種、様々な年齢で発症します。
また典型的な基礎疾患がない子も膵炎になり、太っている子がなるとも限りません。

気になる場合には、早めに動物病院でみてもらいましょう。

SHARE
LINEXFacebook
この記事を書いたのは
獣医師
勝村 桃子MOMOKO KATSUMURA
東京大学卒・神奈川県横浜市出身
BACKGROUND

大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務。 その後、日本動物高度医療センター画像診断科にて11年勤務。超音波検査を専門とする。 2018年 ガリレオ動物病院勤務。

関連記事