JOURNALガリレオ通信猫の咳

先日、呼吸状態がとても悪い猫さんが来院されました。

数ヶ月前から咳の症状は出ていたものの、「毛玉を吐くしぐさだから、大丈夫。」と言われていたそうです。
そのため、ずっと様子を見ていたそうですが、ひどくなってきてので本当に大丈夫なのかと、ご心配されていました。

来院時には、喘鳴(ぜいめい)・開口呼吸が認められ、とても苦しい状態。
咳をする場合は、まずレントゲン検査です。

胸部レントゲン写真

胸のレントゲン検査では肺や気管、心臓のサイズや形状などを評価します。
この猫さんのレントゲン画像では、明らかに肺に問題が出ており、専門的に言うと“気管支パターンおよび局所の浸潤影”という所見が認められました。
これはひどい気管支炎であることが示唆されます。

では・・・原因は何なのか?
それを調べるために、「気管洗浄」という検査を行います。気道内粘液を採取して細胞を見る検査です。
また、呼吸器関連の感染がないかを調べる遺伝子検査も同時に行いました。

その結果・・・好酸球の増加を伴う炎症細胞の増加を認め、ウイルスやマイコプラズマ、細菌感染は認められませんでした。

以上の所見から、この猫さんは「猫の喘息」と診断しました。

猫の吸入器

ここからは「猫の喘息」のお話しです。
猫の喘息は、ヒトの喘息と類似しており、Ⅰ型アレルギーが関与していると考えられています。
気道の炎症、気道過敏性の亢進、気道の閉塞が慢性的に続き、その結果、気道壁が厚くなって気管支の内腔が狭くなり、肺に不可逆的な変化が起こります。

喘息の治療は、
①分泌物を除去する。
②気管支を拡張させる。
③炎症をコントロールする。
この3つを目的に内科治療を行います。

そのため、ステロイド剤やβ刺激薬等の気管支拡張剤を内服または吸入で使用することになるのですが、
☑︎いつ
☑︎どのように
☑︎どのくらい使うか
がとても重要になります。
また症状を改善させるための“短期的な治療”と、安定して維持していくための“長期的な治療”を併せて考えていく必要があります。

もちろん、環境中にアレルゲンがあるかを検査し、特定できればそれを避けることも重要となります。

検査、治療を行った猫さんは呼吸状態も落ち着き、レントゲンの異常所見も改善しました。
発症した年齢によっても、治療法や維持の仕方が違ってきますが、最小限の薬や吸入などで安定した状態を保てるように、注意深くコントロールしていきます。

おうちの方が咳かどうかを判断するのは難しいかと思います。
「もしかして、うちの子は咳をしているかも?」と思ったら、まずスマートフォンなどで動画を撮って下さい。
来院された時、猫は緊張状態にあるため咳をしないことがあります。動画を見せて頂ければ、とても参考になります。

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この記事を書いたのは
院長・獣医循環器認定医
鈴木 啓介KEISUKE SUZUKI
麻布大学卒・静岡県浜松市出身
BACKGROUND

幼少期から常にたくさんの犬に囲まれて過ごしていたことで、自然と獣医師を目指す。 大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務し、その後日本動物高度医療センターで10年間勤務。同センターでは循環器・呼吸器科の医長を務める。 2018年ガリレオ動物病院を開業。

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