心臓は心膜と呼ばれる膜で覆われています。
この心膜と心臓の隙間に何らかの原因で血液や水が貯まり、心臓が圧迫され動きが悪くなる状態を”心タンポナーデ”と呼びます。
そして貯留している液体を心嚢水と呼びます。
心タンポナーデを起こすと、心臓から十分に血液を送ることができなくなり血圧が下がります。
ゆっくり進行する場合は、気付かれにくいのですが、むくみが出たり腹水が出てお腹が膨らんでくることがあります。
急激に進行する場合は、突然倒れたり、ショック状態になることがあります。
診断には心臓の超音波検査が最も適しています。
心嚢水が貯まる原因はいろいろありますが、最も多いのが腫瘍です。
血管肉腫やリンパ腫、中皮腫などの腫瘍が多くみられます。
また、心膜の炎症(心膜炎)や心不全による左心房の破裂(心臓の一部が裂けること)が原因のこともあります。
これらの原因を突き止めるのにも、心臓の超音波検査が欠かせません。
また、緊急時および原因を精査するために、針を刺して心嚢水を抜く必要があります。(心房破裂は例外です。)
いずれにしても、心タンポナーデは早急な診断および治療の開始が必要な状態と言えます。
その原因によっては、予後を改善できる可能性もあるため、きちんと検査を受けましょう。
この記事を書いたのは
BACKGROUND
幼少期から常にたくさんの犬に囲まれて過ごしていたことで、自然と獣医師を目指す。 大学卒業後、川崎市の動物病院に勤務し、その後日本動物高度医療センターで10年間勤務。同センターでは循環器・呼吸器科の医長を務める。 2018年ガリレオ動物病院を開業。